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奇跡!カム!

2014/10/23 Thu 18:18

『パパ!奇跡を起こそうよ!!』

『ふむ。』

『momoさんのとこも、スリブリさんちも奇跡ザックザクだよぉ~』

『ふむ・・ぅ・・・。』

夫に会いに行くと必ず言ってみる。
夫は毎回頷いてくれる。
けれど、残念ながら未だ報告できるような『奇跡』は起こせずにいる。

7月の退院後、夫の状況は悪化した。
だって、11日間もベッドでずっと過ごしたのだからしかたない。
入院前は歩行器で療法士さんと歩く訓練をしていた。
30m歩いたと報告も受けていた。
けれど、今夫は一瞬立つことも難しい。

排せつもトイレに行けずにベッドの上でのおむつ交換になってしまった。

食事に関しても、一時は飲み込みも悪くなって、夫はこのまま食べることを忘れてしまうのだろうかと心配した。
口元にスプーンを持って行っても口を開けず、無理やりスプーンで口をつつくと上を向いて仰け反ってしまう。
それでも無理矢理口に入れると噛もうとはせず、口の中に溜めこんでしまう。
特に水分は口に含んでも河豚のようにほっぺを膨らませたまま、飲もうとしない。
そして、咳でもしようものなら・・・・
(><)
そんな訳で夫の食事は刻み食になった。
刻み食は文字通り、みんな刻んであるので、元のメニューが何なのかわからない。
それぞれの料理がそれぞれのお皿に載ってはいるけれど、
みんな細かく切ってあるので、みんなおんなじに見える。
目ではとても美味しそうには見えない。
でも数回噛めば飲み込むことができる。
それがよかったのか、少し涼しくなった頃から夫は噛むことを思い出した。
最近でもたまに口を開けないことがあるけれど、それでも大抵完食することが出来る。

私としてはそろそろ普通食に戻してもらいたいけれど、刻み食の方が食事時間が短縮できるのは事実。
一人の職員さんが何人もの当事者の方に一匙ずつ食べ物を運んでいるのを見るとちょっと言い出しかねている。
私が食事の介助に行ける時だけでも戻してもらおうかなと思う。

glass.jpg

秋はガラスのイベントが多いので、毎年走り回っている。
今年もそれは同じ。
けど、去年の今頃夫が歩けなくなり、あんなに大変だった時期に頑張れたことが今年は全然気持ちがついて行かない。
夫が入所してもうすぐ一年も経つのに未だ抜け殻状態から脱出できない。
解決してくれるのは時間しかない、今までの経験から知ってはいるけれどちょっといい加減に抜け出さなくては。

そろそろ奇跡、起きてもいい頃だと思う。


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夕暮れ時はさみしくて、

2013/10/27 Sun 13:17

ショートステイ先の夫に会いに行った。
2年振りにお世話になるユニット型の施設。
前回看てもらったのはメマリーを使い始めて絶好調の頃だった。
当時持たせた『最近の様子』の手紙を見ても、

前回お世話になった時と病状は大きく変わっていません。
新薬メマリーを服用するようになって20日ほどですが、前よりいっそう穏やかで、笑顔が多く見られるようになりました。

と始まっている。
時が過ぎ、2年前と病状は大きく変化している。
夫の最近の様子を知ってもらうために『近況』を書き直した。
今まではA4、2枚くらいに『こうしています、ああしています、こうして下さい、』と項目に分けて書いていたけれど、今回は『できません。』『できなくなりました。』が並び、短い近況を持たせることになってしまった。


丘の上の施設、夫は一階のショートステイ用ウィングに滞在している。
ちょうど夫の滞在する建物前の駐車場に車を停めると大きな窓の中に夫の顔が見えた。
おやつ時なので、職員さんが夫の横で介助をして下さっているようだ。
窓越しに職員さんに会釈をすると返してくれた。
夫は無反応。
まあ、仕方ないかな。

建物に入って夫のおやつ介助を職員さんと交代。
夫が普通の椅子でなく、車椅子に座って居るのがショックだった。

いつものように名前を呼んで、話しかけているうちに夫が私の顔を捉え表情が動く。
そうしたら、両手を取って立ち上がってもらう。
歩く練習、これが私がショートステイ先に夫を訪ねてくる一番の理由。
歩けなくなったら、在宅で看るのは難しい。

秋の初めから、夫が家に居る間私は彼をトイレに座らせことが出来ていない。
彼を立ち上がらせ、トイレまで誘導し、座らせる、これだけの事ができない。
夫の体は右に傾きちょっとバランスを崩すとそのまま床に座り込んでしまう。
そうなるともう、息子が戻ってくるまで彼は床の上。

なんとか自力で立って歩いてもらわなければ。
仕事が早く終わった時にはできるだけ夫のところへ行って施設の中のお散歩をする。
お散歩というよりは強制的に廊下を歩かせる。

『パパ、歩いて。歩かないとおうちに帰れないよ。』
『いちっ、にっ、いちっ、にっ・・』

でも残念なことに夫が歩く距離は日増しに短くなっている。

今日もほんの数メートル歩いただけで夫は座りこんでしまった。
ちょっと休んでもう一度。
一時間ほどを夫と過ごし、

『じゃあ、またね。また明日来るからね。』
夫に声をかけると、こっくりうなずいた。

外に出ると秋の日はつるべ落とし、辺りは薄暗くなっていた。
車のドアを開けて振り向くと、明るいリビングにぽつんと座っている夫が見えた。
こちらを向いてはいるけれど彼の目には何も映っていないだろう。

夕暮れ時、みんなが家路に急ぐ時間、
私は彼を置いてひとりで帰る。

涙が止まらない。



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私の朝は夫の濡れ具合を探ることから始まる。
寝る前に夫は安心パンツに6回分吸収のパッドを当てているので、本来なら大洪水は避けられるはず。
しかし、ほとんど毎日夫の腰辺りは濡れていて洗濯物の出ない日は珍しい。
不思議なことに、夫の腰周りがぐっしょり濡れている時は安心パンツやパッドはほとんど無事だったりする。
毎朝いろんなパターンがあって、夜中にあるいは明け方に起こった出来事を想像しながら夫を着替えさせ、濡れたもろもろの道具を処理する。
一時、何故か夫のウェイブが夜中に集中し、真夜中の大惨事の片付けをしていた頃は細切れ睡眠を足しても4時間に満たないなんてこともあった。

お天気の悪い朝はちょっと大変だけれど、でも夜中に何度も何度も起こされてトイレに付き添った頃に比べたら100倍楽になったと思う。
そして、先輩方から伝授されたさまざまな工夫のおかげで手間も時間もずいぶん軽減されている。
私もどなたかのお役に立てればと、我が家の場合を書いてみようと思う。

夫はこの夏からレンタルの介護ベッドに寝ている。
介護ベッドには借り物のマットレスがついているので汚したくないのは布団の時と同じ。
そこで、同じように3重の壁でマットレスを防護している。
まずはマット全体をカバーする防水敷きパッド。四隅にゴムがついていてマットに固定できるようになっている。
次に100×150cmの《耐久性と吸水性に優れたパイル地、モレずにムレない防水シーツ。 裏地がポリウレタンラミネートで、しっかり防水します。》というふれこみの介護用防水シーツ。
これは最初のシーツより少し短いので、頭の部分以外をカバーできるように敷く。
そして、一番活躍するのは大型犬用のペットシート。
60cm×90cmの大きさがある。
デオドラントで臭いも吸収してくれるので、汚れ物を包むのにもいい。
これを3枚、背中から膝あたりまで並べて敷く。
これで敷き布団は完璧。

掛け布団は夏ならばタオルケットをかけるだけ。
タオルケットは毎日どこかちょこっと濡れるので洗濯は避けられない。

これから寒くなると掛け布団にも防護が必要になる。
真冬になると、まず、お腹周りにタオルケットをかける。
掛け布団も丸洗いOKというのを用意しているけれど、できれば洗いたくない。なので、四隅にゴムのついた敷きパッドのWサイズを掛け布団の内側につけている。
サイズもちょうど合うし、万が一濡れてもパッドだけの洗濯で済む。

後、助けられているのはペット用の消臭スプレー。
夫の〈どこでもおしっこ〉の頃は大活躍してくれた。
そして今でも使用済みのパッドにシュッとかけてから新聞紙に包みビニール袋にいれると夏場でもずいぶん臭いが軽減されたと思う。

chya,jpg
〈茶々丸のスプレーお父さんに貸してあげてるんだよ。僕は必要ないからね。えへん。〉



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ピンチ!!

2013/07/18 Thu 11:20

階段の昇り降りが難しくなった。

我が家は4階だけれど、エレベーターは3階と6階にしか停まらない。
家の前の14段の階段、昇り降りは避けられない。

この階段を超えなければショートにもデイにも行けない。
行っても帰って来られない。

大ピンチ。

私のことがわからなくなったら施設入所を考えると常々言って来た。
けど、その前に移動の困難がやって来た。

デイにもショートにも行けず、家で夫と一日中??

ベッドに一日横たわっている人と暮らす覚悟は無い。
まだ・・できてない・・。




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iPhone 水没

2013/05/30 Thu 18:29

部屋を出る時、母がテーブルの上に置いたiPhoneを手に取るのが見えた。
一瞬迷ったけれど、タオルをしまって来るくらい大丈夫とそのままにした。
タオル置き場の整理もしてから戻るとiPhoneはミルクティーのカップの上に蓋をするように置かれていた。

  !!!

すぐにiPhoneを手にとると頭のカメラ部分が濡れていた。
カップの中にはミルクティーが半分くらい残っていた。

やってしまった。

父は
『手の届くところに置いたのがいけないね。』と、言いその後に
『僕の奥さんのしたことだから、僕が新しいのを手当てするよ。』と加えた。

もちろん母の手の届くところに大事な物を置いて、しかも母がそれを手に取ったのを知りながら放置した私がいけないに決まっている。
百も千も万も承知。
では、何故すぐに取り上げなかったのか。

私は母が興味を持って手をのばし持ってみた物をすぐに取り上げたくなかったのだ。
認知症の人は何かをしようとして止められることが多い。
そう、病気が進めば、止められることばかり。

ティッシュを取り出そうとして止められる。
引き出しを開けようとして止められる。
ややこしいことをしないでじっと座っていてくれるのが、介護者にとってありがたいこと。
何かを壊されても、汚されても介護者の手間が増えるばかり、どうぞ大人しくしていて、なんにも触らないで。

病気がもう少し進む前、母は私が持って来たバッグや私の洋服にとても興味を持った。
『ちょっとごめんなさいね、』と言いながら、バッグの中をのぞいたり、私の服を着てみたりした。
普段家にない新しいものをちゃんとわかって興味を持ってくれることが私は嬉しかった。
ある時、バッグの中から携帯を取り出した母に、
『あっ、それはだめ、ごめん。』とすぐさま取り上げた。

その時の母の表情が忘れられない。
一瞬時が止まったようなその表情は私に痴呆という言葉を思い出させた。
驚いたような、申し訳なさそうな、そして何が起きたのかわからない困惑の表情。
絶望も混じっていると思う。


前にも書いた。
認知症の人は自分がおかしいことを知っている。
自分が今までの自分と違うことを認知している。
ただ、何がおかしいのか、何が違っているのか自分では分からずいつも不安をかかえている。
そんな時に突然自分が否定されたら、
初期の頃なら怒り出すかもしれない。
でも、病が進むと怒ることもできずに困惑する。
この『困惑の表情』は認知症の人に共通する特有の表情だと私は思っている。

私の夫も母ももちろん全然違う顔立ちだけれど同じ表情をすることがある。
これは同じ病気を患っているからだと思う。
そして、この表情が私はきらいだ。
夫にも母にもこんな顔をさせたくない。

私の携帯は今、電源を切ってシリカゲルの中で乾燥させている。
ミルクティーの汚れは手強い。
本当は一度真水で洗うべきだったんだろう。でも勇気がなかった。
復活しなかったとしても新しいものを手に入れれば済む。

元気な母も夫ももう戻って来ない。



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