久しぶりだぜ、フランケン

2011/05/27 Fri 12:10

朝、布団に横たわったまま目だけ開けている夫。
視線は定まらない。
声を掛けても動かない。
最近はこの状態が30分は続く、時には一時間も。

でも今朝は違った。

『パパ、起きて。
 今日はKgさんとKbさんとランチに行くからね。』

『うん。』

夫は苦も無く起き上がった。

たった一声かけただけなのに夫はお出かけを理解し、朝の行事はスムーズに進んだ。
そして、お出かけおしっこも一回で成功。

玄関では靴を履きながら、
♪アルプス一万尺 ♪ ♪ さあ踊りましょ、へい!!♪

威勢よく家を出た。

ランチはイタリアン。
Kbさんのお知り合いのお店で、私達の状況を理解した心遣いで迎えて下さった。

お料理も美味しく、夫も上手に食べ進んだ。
オードブル、ムール貝の殻を齧ってしまうというアクシデントもあったけれど、大事には至らずに済んだ。

レストランは通りの2階にありこじんまりとした居心地の良いお店だった。
私達が食事を始めてしばらくした頃、男ばかり十数人の団体がやってきた。
みなさん、70代?たぶん同級会だろう、赤ワイン、白ワインが次々と運ばれ、それとともににぎやかになる。

夫の眉間に皺がより、表情がなくなる。
私達の話が聞こえなくなって、不快に感じているのがわかる。

健常者は騒音の中でも自分に必要な音を拾い会話を続けることができる。
でも認知症の人たちはそれが難しく、騒音から逃れることができないのだ。

メイン料理が運ばれた時には夫は話かけても返事をしなくなった。
そればかりか、世話を焼く私に、

『ばか。』と一言。
怒りが顔を出している。

これは触らない方がいい。
夫はメインのお肉料理をお箸で突っつくけれど、食べようとしない。

お手拭きを畳んでパン皿に載せたり、自分のお皿からお迎えのKb夫人に料理を移したり、混乱の様子。
 
こんな時、変に声をかけて火に油を注ぐのは賢くない。
放っておくことにした。

結局、長い時間をかけて、なんとかお肉は半分くらい食べたものの、デザートは一切手をつけずランチを終えた。

レストランを出て、騒音から逃れた後は表情が戻ってきた。
  と、判断したのだが、
     それが間違いだったかもしれない。

元町をぶらぶらとゆっくり歩き、山下公園に抜けた頃から夫の動きが怪しくなった。
突然階段を駆け上ろうとしたり、私の手を振り切ってあらぬ方向へ向かおうとする。

しっかり夫の手を握り、時々飴を口に放り込んでなだめつつなんとか駅にたどり着き、みんなとお別れの挨拶。

『楽しかった。また遊びましょうね。』

この時はまだ、そう思っていた・・・。

駅の改札を通り、二人になった途端、夫は私の手を振り切った。
そして、なんども繰り返してきたフランケンとの戦い、家路への果てない旅が始まる。

今回のクライマックスは最寄の駅に着いた時。
いつものように席を譲ってくださる方を丁重にお断りして、夫の両手を握り向かい合って立っていた。
電車が止まる瞬間の揺れで体勢を崩し、夫がつり革を掴んでしまった。

やばい!!
ドアが開く。

夫の手をつり革からはがしたものの、夫は動かない。
無理やり扱われたことに腹を立てているのだ。

電車に乗っている間夫は私と向かい合い、握った手、そして自分の腰を振りながら『夕焼け小焼け』を唄っていた。もう、充分回りの注目は集めている。
今更、人目を気にすることもない。

『降ります!!』

もう次の駅まで行くのはごめんだ。
まさに、腰を落として綱引きスタイル。

早くしないとまたドアが閉まってしまう、懇親の力で夫の両手を引っ張り引きずり降ろした。

夫と共にホームに降り立った時、やれやれと回りに目をやって気づいた。
乗り込む乗客たちは、私と夫のためにホームで足止めを食っていた。
いや、両側に寄って、待っていてくれた・・・。

しばらく動けなかった。

そして、玄関のドアを開けて夫を後ろから蹴り入れるまでもうひと頑張り。

疲れた。

もう、夫と一緒に外出するのは無理だろうと思う。
今までは夫を操縦する困難よりも、みんなと会っておしゃべりする楽しさ嬉しさの方がはるかに勝っていた。

でもみんなとおしゃべりしながら、『ああかな、こうかな、やばいかな、大丈夫かな、』夫を窺う。
もう、無理だ・・・・。

肩、肘、手首、力ずくのあとが痛む。







と、いう訳で、次回からは、私ひとりで行きます。

また、次回を楽しみにしています。

(^O^☆♪


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コメント
お疲れ様
今日は楽しいのと はらはらと なんだか 疲れが二倍だったですね。
でも ご主人を外出させてあげようとしたことが すごいですね。
でも 女友達と会うときは 旦那抜きが 楽しいよね昔から(私は女同士いいたいこと言って 騒ぐから)

ご主人歌好きなんですね…
No title
夫はお出かけ大好きなんですけれど、帰り道には疲れてしまい、フランケン化してしまいます。
疲れる前に帰って来ればいいのですが、私も楽しくてついつい。

病気本人が、奥様だったらきっともっと楽にコントロールできるのでしょうね。

はい、音楽のおかげで介護の苦労がずいぶん緩和されています。


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