夕暮れ時はさみしくて、

2013/10/27 Sun 13:17

ショートステイ先の夫に会いに行った。
2年振りにお世話になるユニット型の施設。
前回看てもらったのはメマリーを使い始めて絶好調の頃だった。
当時持たせた『最近の様子』の手紙を見ても、

前回お世話になった時と病状は大きく変わっていません。
新薬メマリーを服用するようになって20日ほどですが、前よりいっそう穏やかで、笑顔が多く見られるようになりました。

と始まっている。
時が過ぎ、2年前と病状は大きく変化している。
夫の最近の様子を知ってもらうために『近況』を書き直した。
今まではA4、2枚くらいに『こうしています、ああしています、こうして下さい、』と項目に分けて書いていたけれど、今回は『できません。』『できなくなりました。』が並び、短い近況を持たせることになってしまった。


丘の上の施設、夫は一階のショートステイ用ウィングに滞在している。
ちょうど夫の滞在する建物前の駐車場に車を停めると大きな窓の中に夫の顔が見えた。
おやつ時なので、職員さんが夫の横で介助をして下さっているようだ。
窓越しに職員さんに会釈をすると返してくれた。
夫は無反応。
まあ、仕方ないかな。

建物に入って夫のおやつ介助を職員さんと交代。
夫が普通の椅子でなく、車椅子に座って居るのがショックだった。

いつものように名前を呼んで、話しかけているうちに夫が私の顔を捉え表情が動く。
そうしたら、両手を取って立ち上がってもらう。
歩く練習、これが私がショートステイ先に夫を訪ねてくる一番の理由。
歩けなくなったら、在宅で看るのは難しい。

秋の初めから、夫が家に居る間私は彼をトイレに座らせことが出来ていない。
彼を立ち上がらせ、トイレまで誘導し、座らせる、これだけの事ができない。
夫の体は右に傾きちょっとバランスを崩すとそのまま床に座り込んでしまう。
そうなるともう、息子が戻ってくるまで彼は床の上。

なんとか自力で立って歩いてもらわなければ。
仕事が早く終わった時にはできるだけ夫のところへ行って施設の中のお散歩をする。
お散歩というよりは強制的に廊下を歩かせる。

『パパ、歩いて。歩かないとおうちに帰れないよ。』
『いちっ、にっ、いちっ、にっ・・』

でも残念なことに夫が歩く距離は日増しに短くなっている。

今日もほんの数メートル歩いただけで夫は座りこんでしまった。
ちょっと休んでもう一度。
一時間ほどを夫と過ごし、

『じゃあ、またね。また明日来るからね。』
夫に声をかけると、こっくりうなずいた。

外に出ると秋の日はつるべ落とし、辺りは薄暗くなっていた。
車のドアを開けて振り向くと、明るいリビングにぽつんと座っている夫が見えた。
こちらを向いてはいるけれど彼の目には何も映っていないだろう。

夕暮れ時、みんなが家路に急ぐ時間、
私は彼を置いてひとりで帰る。

涙が止まらない。



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