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明日の記憶、時間のチカラ

2011/12/23 Fri 16:08

そうは言っても夫の病気の宣告以来、私は強くなった。
強くならざるを得なかった。

夫の病気の宣告を受けたその瞬間は、
『あ~やっぱり・・・』という気持ちの中で、何かを思うというよりはただ空白・・。
時間が止まったように感じ、診察室に居る夫や私、そして医師をどこか外側から眺めているような、そんな錯覚を覚えた。
帰り道も激しい動揺は感じなかったのを覚えている。

でも時間が、日が経つに連れて事態の重さを理解し、つのる不安で押しつぶされそうに、いや、押しつぶされた。
でも私はそこでうずくまって居る訳には行かなかった。
夫は病気になってしまったけれど、私達家族は暮らして行かなければならない。
特に最初の半年は決断して行動しなければならない事が山積みだった。
とにかく、立ち止まって感傷にひたっている時間はなかった。

突然食らった人生のどんでん返し。
心の中はぐちゃぐちゃだったけれど、
なんとかそれをしまい込んで、できるだけ今までと変わりなく穏やかに生活をする、それが私の家族を守る方法だと思った。
時間を撒き戻せるとしても、あの時だけには帰りたくない。
振り返れば、あの時ああしておけば、という事はたくさんある。
でももう、いい。
もう一度あの日々を過ごすのはもうごめん。
やり直せなくてもかまわない。

・・・・、強くなったというのとはちょっと違うかもしれない。
強くなったのではなく、心に蓋をする術を少しずつ覚えていったのだと思う。
何か自分の心を揺さぶるようなきつい出来事があった時、一歩、いや5歩くらい渦中から遠のいて人事のように外から自分をみる。
あるいはバリアーを張って、激しい感情を出さない、入れない・・・。


何が起きても驚かない、自分に言い聞かせて暮らした時間だった。



ある時、自宅のガラス教室に若いお母さん達が体験にやって来た。
友人の紹介だったので、友人以外はみんな初対面。
色とりどりのガラスを前に、これから出来上がるであろう、アクセサリーを思って彼女たちの気持ちは華やいでいた。
好きなガラスを選び、組み合わせながら、彼女達のおしゃべりもはずむ。
子供のこと、夫のこと、学校のこと、お料理、音楽、ファッション、話題は果てしない。

_IMG_0802.jpg

丁度その頃、映画『明日の記憶』が封切られた。
若年性アルツハイマーを患った主人公とその妻の感動ストーリー。

中の一人が、
『先週、主人と明日の記憶を見に行ったの。』
『あ、私、この週末行こうと思ってる、どうだった?』

多分、私の表情は一瞬止まったと思う。・・たぶん。
心の中にひゅ~っと冷たい風が吹き込み心のシャッターが降りる音がした。。
私はバリアーの中に閉じこもり、彼女達の声を遠くで聞いていた。

『私だったら、絶対無理。あんな風にはできないと思う。』
『映画の二人にはそれなりに積み上げたものがあったから、あんなふうにできたけど、私はだめ。だって・・・』



私はその会話に加わらなかった。
でもちゃんと笑顔で頷いていたと思う。
話題が次に移るまで・・・。


でも、
その時、私の目の前で映画について語る彼女達を一瞬だけれど、
私は憎いと思った。

もちろん、若いお母さんたちも私の友人も、私の夫がまさしく、その若年性アルツハイマーであることは知らない。
彼女達に全く罪はない。
でも、無邪気にファッションや美味しいお料理と同列に語られることが悲しかった。
黙って微笑んでいるしかない自分に腹をたて、生まれてしまった怒りを彼女達に向けないように耐えていた。

私はこの映画は見ない。
見るつもりはない。
映画はきっと、深い感動のラストシーンで終わるのだろう。
だけど、リアル若年性アルツハイマーの夫との暮らしはそんなきれい事じゃない。

私は勝手に自分だけ、 ひとりで 深く傷ついた。
自宅で開いた最後のガラス教室、2006年の秋、もう5年以上も前のこと・・・・・。



今なら、
『実はね、驚かないで聞いてね、
 私の夫も、・・・』

さらっと言えちゃうかも?・・しれない。
現実はこんなものよ、と、たっぷり、苦労話を披露するかもしれない。
  ・
  ・
  ・
  まあ、しないかな。
そんなことして、相手を困惑させても何の意味もないものね。
でも、その場、その場で夫の病気を伝えるか伝えないか、自分で場をコントロールする力は持てたと思う。
シェルターの中に逃げ込んで嵐が去るのをじっと待つだけの私ではもうない。
そして、このチカラは鍛えられて得たものではなくて、時間が少しずつ積み上げてくれたチカラだと思っている。
そう、時間のチカラは偉大。

 でも、でもやっぱりまだ、この映画を見る気にはなれない私が居る。



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